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スクラムからほつれる。関大、4連敗。【Go To 100 year 鎮勝也のマッチレポート】

 ★2022年ムロオ関西大学ラグビーAリーグ第4節。近大戦。

 10月23日(日)。午後2時キックオフ。晴れ/微風。天理親里ラグビー場(奈良)。

 得点=19-60(前半0-29)。3T2G×9T6G1PG。

 ※関大は4節終了段階で0勝4敗。勝ち点1の7位。






 関大はスクラムの効能を思い知らされた。前半9分、近大に奪われたのは、「ST」。いわゆる、スクラムトライによって両チームを通じて最初のスコアを許した。


 ファースト・スクラムはその1分前、レフリーの米倉陽平が首を抜くしぐさをする。重圧に耐えかねた。近大はペナルティーを得て、再度スクラムを選択した。関大は最終の5メートルほどを押し切られてしまう。


 主将の池原自恩は試合後の記者会見で敗因を絞り出す。

 「セットプレーです」

 この近大戦では特にスクラムと解する。この前半9分を皮切りに、失ったトライは計9本。紺白はブルーに19-60と大差負けする。


 これで開幕から4連敗の7位。勝ち点は第2節、同大戦(25-26)で得た1のままだ。目標の大学選手権出場は絶望的。今年は関西リーグの上位3校までしか出場できない。





 スクラムの劣勢は試合全般に影を落とす。最初のSTがスクラムの「表」なら、3本目、前半27分の失トライはその「裏」が使われた。押し返しに注力した瞬間、虚を突くようにBK展開。関大はブレイクが一瞬遅れる。その一次攻撃であっさり決定力のあるWTB三島琳久にインゴールを陥れられた。


 スクラムに関して監督の森拓郎は唇をかむ。

 「ウチもやっているのですが…」

 ヘッドコーチの園田晃将は補足する。

 「2年前から時間をかけるようになりました。今年は週に4、5回、多い時は1時間以上を費やします」

 この時間はもうひとつのセットプレー、ラインアウトも含まれる。





 関大は従来、アンストラクチャーのラグビーを磨いてきた。ボールが展開されてからの攻めである。こぼれ球をつなぎ、一気に自陣からでも逆襲する。ただし、展開のスタートが崩壊すれば、乱戦からの攻めは難しい。そして、相手はその脆弱さを突いてくる。


 そのことを指導者たちはわかっている。だからこそスクラムを軸にしたセットプレーに力点をかけはじめた。ただ、その強さを会得するのには時間を要する。


同じAリーグに属する京産大のスクラムは有名だが、このチームは大西健が監督に就任した1973年(昭和48)から強化を続けてきた。総監督をつとめた横田昌治(故人)が8対8のスクラムの上で寝そべり、8人が一枚岩として水平になっていることを確かめたり、3時間ぶっ続けで組み合いを続けてきた。半世紀の歴史、いわゆる伝統がある。


 指導者や選手たちがその辛抱を続けられるか。頂点を目指すのにアクセスはいくつかあるが、近道はない。


 この近大戦は戦い方にも疑問符がついた。後半、先制したのは関大だった。4分、ラインアウトの列を交替SHの溝渕元気が割る。トライを挙げ、ブースターにふさわしい動きを見せた。SO池澤佑尽のゴールキックも決まり、7-29と追撃ののろしを上げる。





 ところが6分後、敵陣22メートル付近でオフサイドの反則をもらいながら、3点のショットを選択せず、タッチラインアウトからのトライを狙った。最終的にはノックオンを犯し、加点はならなかった。


 その判断をした時、近大のOBは「えっ」と声を上げた。社会人で競技を続けている選手である。関大には池澤がいた。左中間ではあったが、右利きだけに巻き込みながら決めやすい。後半開始から連続の加点なら相手に与えるプレッシャーも違ってくる。


 ペナルティーゴールの利点は相手を考えず加点できること。チャージはできない。蹴り手は自分や自然条件のみと戦えばよい。ラグビーは得点0から始まる。点数の積み上げがないと勝てない。たかが3点と思うか、されど3点と思うのか。


 ここで加点していれば、差は19点。連続でトライをとれば、背中は見える。何より大切なのは、「よい流れは守る。悪い流れは断ち切る」ということである。後半の先制トライで主導権は握った。ここはさらに流れを我がものに引き寄せたかった。


 前節の京産大戦では前半3分、SO佐藤泰我がPGを決めた。先制をした。結果的に19-99と大差で敗れたが、あの選択は正しかった。まず流れをつかもうとした。ただ相手にはその流れをものともしない力があった。


 近大戦後、協会関係者は話している。

 「あの京産大の負けから1週間でチームを立て直せ、というのは関大にとって酷ですな。どのチームもイコール・コンディションやけど、せめてもう少し時間があればね」

 対戦カードは前年の勝敗で決められる。今年は別のチームだけに、対戦の妙は起こりうる。大事なのは同情者はいる、という点だ。


 幸いなことに、関大にとって次は3週間空く。次戦は11月13日(日)、相手は摂南大。神戸ユニバー競技場で11時45分のキックオフである。


 この3週間の空きというのは元々、コロナ対応のため、どのチームにも入れられた。患者が出た場合、代替試合を入れるためである。この期間が今のチームにとってはとてもありがたい。仕切り直しができる。


 関大はこれまで4節の反省点を洗い出し、備えていきたい。ケガ人も戻って来る。次の第5節は満を持して臨みたい。





◇近大戦先発メンバー

1河瀬拓磨(関大北陽④)

2今井虎太郎(尾道④)

3細矢一颯(関大北陽③)

4中薗拓海(関大北陽③)

5中村豪(常翔学園①)

6奥平一磨呂(東海大仰星①)

7岩崎友哉(関大北陽③)

8池原自恩(関大一❹)

9末井健将(報徳学園③)

10池澤佑尽(東福岡③)

11澤口飛翔(御所実③)

12米虫悠輔(関大北陽②)

13藤原悠(大阪桐蔭④)

14遠藤亮真(東福岡①)

15山村英毅(関大北陽④)

◇入替 後半0分=河瀬→杉原絃太(大産大附③)、今井→垣本大斗(石見智翠館③)、中村→福島蒼(大産大附④)、末井→溝渕元気(大産大附③)。同17分=藤原→石川海翔(大産大附②)。同22分=岩崎→雨谷陸椰(常翔学園③)。同25分=細矢→平尾啓太(大阪桐蔭①)。同29分=遠藤→大坪勇太(久我山④)。※白抜き数字は主将。


(文責:鎮勝也)


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